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牛乳不足
5月30日の朝日新聞のトップは「牛乳品薄の恐れ」という記事でした。
バター不足のときは再三報道はされましたが、家庭欄のページの扱いでしたので
酪農を巡る環境がより逼迫していることが窺えます。

「牛乳が品薄」という事態は想像できませんでした。バター不足の記事に書いたように
天引きでバターや脱脂粉乳を買わされていた2年前は悲惨な「牛乳余り」。
組合からは「牛乳の余剰解消のため子牛は牛乳で育てるように」という指導書が
再三配布されました。

新聞では、家畜の飼料の高騰などの影響で酪農家の廃業が多くなり、牛乳の生産量が
去年4月比で2.6%減少していると報道していました。
酪農だけでなく肉牛農家もかつてないほどの飼料代の高騰、原油高またそれに起因する
物価の上昇でかつてないほどの苦しい環境に置かれています。
大げさではなく八方塞がりといった有様で、わずかばかり乳価がアップしたといっても
焼石に水という状況です。

原因は、バイオ燃料や穀物への異常な投機、豪州の干ばつによる飼料高がもちろん
大きいのですが、それ以前から慢性的な乳価格の低迷、そしてH16.11.1施行の
家畜の排泄物の適正利用に関する法律により、堆肥処理施設を畜産農家は作ることが
義務化され、その借金が残っていることも(我家もそうです)より経営を苦しくしています。

肉牛農家も飼料高の上、物価上昇で消費者の牛肉離れが進み
牛肉の価格が下がり苦しい状況です。例年より一頭10万円以上安いと聞きました。
その影響で、肉牛農家が子牛を買う予算が苦しくなり、肉牛の子牛の価格が大下落。
これが酪農家に大きな打撃となっています。

わかりやすく説明しますと、酪農家はホルスタインの子牛を産ませるのが原則ですが、
初産の牛(難産を防ぐため)や高齢牛には和牛の種をつけてFIという肉用の交雑種を
産ませます。この子牛を2ヶ月育てて市場で肉牛農家に売却します。
これが値の良い時ならオスなら20万円を超えることもあり、メスでも12万くらいにはなり
酪農家にとって貴重な「まとまった現金収入」になっています。
これで機械を買ったり、返済にあてたり、牛の導入資金にしたり......。
それが今では半分以下の価格に。10万円以下が当たり前です。
飼料代は天井知らずの上昇、貴重な肉牛の収入も激減。
手持ち資金がないため牛の流通が滞り、飼養頭数も増やせません。
これが酪農家の置かれている現状です。

飼育頭数が多いほど、長く続けるほど赤字が増加。
早く廃業した方が借金が少ないといわれる状況で廃業率が多くなっています。
我家もベーベ工房の収入が本業の補填に回ることも多々あります。
夢が持てない状況、この先どれだけ経費が上がるか考えることが怖いです。

「農政の失敗」。その通りだと思います。。
ここまでの輸入穀物の高騰や、乳製品の国際価格の高騰は想定外だったかもしれません。
でもたった2年前には「牛乳余り」で牛を処分させ、今度は増産しろ.........。
酪農家を自分達と同じ人間だと思っているのかとすら疑います。
畜産農家の行政への不満は大きいです。

酪農家の廃業が多い、と新聞は報道しますが、休みのない仕事の上にこのような状況で
手塩にかけた子供に跡を継がせたいと皆さんが酪農家なら思われますか?
バターどころか牛乳不足の恐れが現実になって初めて、酪農家の現状を省みる行政に
私は強い不信を持っています。


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やりたいことができる幸せ
昨日は出来上がったレシピカードをお世話になった方に発送しました。
仕事をしながらBGMとして聞いていたのは届いたばかりのラベック姉妹の新作のCD。
先日のエントリー「もういちどラベック姉妹」で書いたように待ちかねていたCDでした。

2台のピアノによる「ボレロ」は仕事をしながらエキサイトしてしまう程の迫力でした。
何より素晴らしかったのは、ラベック姉妹のピアノから「本当にこの曲を手がけたかったんだ」
という心弾みや強い意志がどの曲からも、華麗な迫力で伝わってきたことでした。

大手レーベルと袂を分かつ時は、有名ピアニストといえど葛藤もあったことと思います。
でもピアノだけでなく、ファッションにも卓越したセンスを誇る彼女達にとって、プロデュース
はピアノを弾くことと同じくらい大切な自己表現なのだと「このボレロ」から痛いほど
伝わってきました。

彼女達を自分に引き寄せて書くのは、おこがましいことと承知していますが、
私にも、本当に自分が表現したいことを、ある程度の商業ベースに乗せて行う
ことの苦労&喜びはとても理解できます。
私達にとってのベーベ工房は自主レーベルみないなもので、一切の補助金(税金)を受けず
自分達の資本で立ち上げました。
確かに補助金を受けた方が経済的には楽です。でも自分の「夢」を実現することまで
税金を当てにすることはやってはいけないという信条もありますし、報告の資料を作ったり、
拘束が多くなることだけはしたくありませんでした。
そうでなければこんなブログで好きなことを書いたり、レシピカードを作ることものびのびとは
できなかったでしょう。

ラベック姉妹の自主レーベル第二弾も早速申し込みました。
ストラヴィンスキーとドビュッシーのカップリングです。
お互いに親交があったという二人の作曲家を取り上げたのもラベック姉妹ならでのこだわり。

こだわりを実現することには勇気と実力が必要です。
私もそのような勇気を持ち続けたいと思います。
ラベック姉妹の音楽はそんな私へのこよないエールです。



チーズレシピカード完成!
イエ~イ!と歓声をあげたくなる気持ちで書いています。(爆)
しかもBGMは先日書いたラベック姉妹のピアノによるボレロ。
最高に幸福な気持ちです。

ベーベ工房を始めたのが1998年。
お客様から何回も電話などでチーズの食べ方の質問をいただきました。
そのような気持ちにお応えしたいことと、私自身の遊び心によりずっとチーズのレシピを
紹介するリーフレットを作りたいと思ってきました。
去年秋から、イラストを書いてくださる中嶋クミさんに相談に乗っていただき、今回の
ために新たに2点のイラストを追加で描いていただきました。

そしてデザインは印刷会社の担当者にアドバイスをいただきながら、10年以上前の
千趣会のグッズの中からカードを発見し、それを元に私が提案しました。
イラストの色彩をお伝えすべく、オールカラーでの印刷です。
お取引先やお世話になっているお店には順次、発送させていただきます。
ご感想などをいただければ嬉しいです。

商品の案内もHPで行い、紙で作ることが大きな会社でも少なくなったと言われています。
でも、私はあえてペーパークラフト感覚で作りたいと思いました。
子供時代から現在に至るまで、私はおいしいお菓子や紅茶などについてくるリーフレットを
読みながらいただくことが大好きです。その製品の背景や作り手の思いがこもった文字を
目にしながら食べる味は格別です。
また子供時代にこのようなリーフレットを目にすると、食文化や地理にいたるまで意外と
好奇心が芽生えてゆくのです。
(私の英国史の始めの一歩はトワイニング紅茶のキングシリーズの解説でした)


ささやかなカードですが、お客様に楽しんでチーズを召し上がっていただくための手引きに
なれば幸です。
関係者の皆様、私のわがままに付き合っていただき本当にありがとうございました。
心より御礼申し上げます。

山際淳司さん
5月29日はスポーツノンフィクション作家の山際淳司さんの命日。
1995年にまだ46才のお若さで癌のため亡くなられてからもう13年が経ちました。
私は会社帰りの電車の中で、隣りの男性の読む夕刊で山際さんの死を
知りました。あの日は肌寒く雨のひどい日で、TVでは貴乃花関の華やかな披露宴の模様が
放映されていたのを今でも覚えています。

「江夏の21球」でスポーツノンフィクションという分野を確立された山際さんの作品はもちろん
スポーツジャーナリストとしての彼の大ファンでした。
特に「江夏の21球」。1979年の近鉄と広島の日本シリーズの最終戦を描いたこの作品は
テレビであの試合をライヴで観た私にとって忘れられない作品となっています。
またこの作品によってあの試合が伝説になったと思います。

スポーツ関係の記事それまではせいぜい新聞のスポーツ欄で読むものでした。
また内容も試合経過と結果の報道。そして選手や監督のインタビューだけでその裏にある
選手達の心の動きを伝えてくれるものは少なかったと思います。
「number」創刊号を飾った「江夏の21球」は今思えば、とても斬新で革新的な作品ですが
山際さんのわかりやすく自然で、そして無理のない文章によって自然に心の中に入り込んだ
作品でした。あれがスポーツノンフィクションの分野を確立したかけがえのない
作品だったと私が感じるようになったのは山際さんの死後のことでした。


山際さんはその他にも魅力的な作品を沢山世に送りました。
   「スローカーブをもう一球」
   「逃げろボクサー」
などは、その魅力的な題名だけでも知っている方も多いでしょう。
また、スポーツキャスターとしても活躍され、CMにも出演されていました。
理知的で紳士的でハンサムな本当に素敵な方でした。  

手元にある彼の作品はどれもみな素晴らしいと思いますが、特に好きなのが1984年に
出版された、あの池田高校の蔦文也監督を池田高校に尋ねての対談集です。
題名は「強うなるんじゃ」(集英社)。
ちょうど前年の夏に池田高校が甲子園を初制覇し、翌年の選抜で水野雄仁投手を擁して
夏春連覇を果たす直前の出版です。
山際さんと蔦監督の本音がユーモアを交えて語られています。
もうお二人も世を去られ本を見るたびにちょっと切なくなります。

イチローや松阪の活躍を山際さんの作品で読みたかったです。
山際さんもきっと二人の現在を見たかっただろうな......。




ホエー(乳清)のこと
ホエー(乳清)の定義から書きましょう。
チーズを作るときレンネットと呼ばれる酵素を牛乳に入れると

         
           /凝乳(カード)
           \乳清(ホエー)と呼ばれる水分

に分かれます。凝乳(カード)の部分を発酵させる事でチーズが完成します。

ホエー(乳清)はどうするか?蛋白質も豊富に含まれる乳清ですが、先日のナチュラルチーズ
の嗜好実態報告書でも ホエーの処分が悩みの種だと回答されている生産者が多かった
のが現状です。

ベーベ工房ではホエーは大切なリコッタチーズの材料です。
だからホエーの処分では悩んでおりません。
リコッタチーズはモッツァツァレラチーズを作る過程でできるホエーを煮立て(リコッタと
いうのはニ度煮た、という意味)そこに牛乳を加えてざるに入れて冷まして、固めて作ります。

ところで、以前は「チーズとは乳を凝固させたもの」という定義からリコッタチーズはチーズ
ではない、という意見もありましたが、現在ではフランスでもAOCに認定されたブロッチュ
というリコッタとほぼ同じチーズが立派にチーズとして認められています。(1998年認定)
本場のイタリア・ナポリではお豆腐を食べる感覚で愛されているチーズです。

日本でもチーズの生産量の多い十勝などではこのホエーを豚の餌として与え
「ホエー豚」として地域もブランド豚として大切に育てています。
(尚、世界最高といわれるパルマの生ハムはホエー豚から作ったものしかパルマの生ハム
 として認められていません。パルミジャーノ・レジャーノのホエーも豚の飼料です)
ホエー豚は脂身にもうまみがありシェフ達にも愛されているようです。
ホエーを有効利用しておいしい豚肉ができることは、チーズ生産者として嬉しいことです。

ホエー豚のことを主人に話したらおもしろい話をしてくれました。
彼は大学時代、1ヶ月間スイスの農家に住み込んで牛の世話をしてチーズの製造を学び
ました。スイスでお世話になった農家では自家用に10頭ほどの豚を飼っていてチーズを作る
小屋に行く時は牛追いならぬ子豚追いをしてチーズ小屋の隣りの子豚用の小屋に
連れてゆきホエーを与えていたそうです。子豚はまっすぐ歩かないので子豚追いは
大変だったようです。でも何か幸福な光景が浮かびました。

昨日書いたエシレバターではバターを作る時にできるクリームと家畜用脱脂粉乳と
食用脱脂粉乳を出荷しているそうです。
ホエーのことにしろ、チーズやバターを製造する時の副産物がどうなっているかを
消費者に伝えてゆくことも大切なことだと感じています。


エシレバター到着
4月30日のエントリーでエシレバターのことを書きました。
その注文していたエシレバターが24日に届きました。
早速トーストにつけていただきましたが、やはりおいしいです。変な「ケモノ臭」がありません。
3才8ヶ月の息子は食が細い方なのですが、なんと普段は食べないパンのみみまで完食!
子供は正直ですね。

包装紙に輝くAOCのマーク。これを見ただけで高くても納得してしまう自分がいます。
少しでもフランス農業に関心のある方ならAOCの認定を受けることがどれだけ大変で名誉な
ことかわかると思います。(個人なら人間国宝くらいの価値かもしれません)

高くても納得する、ということで思い出したのが司馬遼太郎の小説「菜の花の沖」。
その中に、主人公の高田屋嘉兵衛が商う海産物の描写があり、「箱に高田屋の焼印が
あれば信用されているので高く売れる」とありましたが、まさしくAOC認定とは味と信用の
通行手形なのだと思いました。

私が購入したのは雑誌で取り上げられることの多いカゴ入りではなく、100gの普通の
包装紙のものです。
これが可愛いサイズなのですよ。切ればトーストに乗せるのにぴったりのサイズです。
日本の一般的なバターは200gなので半分の大きさです。

バター不足に悩む日本。このサイズは是非多少割高でもよいので製造して欲しいです。
使用頻度の高い家庭ならいいでしょうが、案外200gを使い切るのは時間がかかるのです。
古くなると脂肪が酸化して風味も落ちます。
また、「トーストに乗せて食べるだけで、お菓子作りには使わない」という消費者は多いわけで
限られたバターという資源の有効利用のためにも、是非可愛い100gサイズを欲しいと
エシレバターを手に取りながら考えました。

世界最高峰のバターという評判は本物でした。脱帽です。



もういちどラベック姉妹
このところフランスのピアノ・デュオのラベック姉妹にお熱を上げている状態で、一気に
2枚のCDを申し込んでしまいました。
きっかけは5月20日のエントリーで書いたガーシュウィン。
ラベック姉妹のことに触れたら、80年代に一世を風靡した美貌の姉妹の、ガーシュウィンや
ストラヴィンスキーの粋であでやかで華麗な演奏にのぼせかえっていた20代の頃の自分を
思い出して、その気持ちが奔流に押し流される状態になったのです。

ガーシュウィンやラグタイム(映画「スティング」でも有名)などモダンな音楽でブレイクした
ラベック姉妹ですが、実は純然たるクラシックのピアニストです。パリ音楽院のご出身。

20代の私は彼女達のきらめくような才気あふれる音楽にすっかり参ってしまった時期が
ありました。あのスリルに満ちた躍動感、時折見せる物憂い表現。
サントリーのCMにも出ていた美貌。
ところが彼女達がブレイクしたのはまだLPのレコードの全盛時代。
私が所有しているラベック姉妹のCDはモーツァルトのピアノ協奏曲だけ。
CD化されなかった曲もありいつのまにか記憶の彼方のピアニストになってしまったのです。

所属していたメジャーレーベルと決別したということで、コンサートは活発に行っていたものの
最近はCDが発売されることがなく、日本では「あの人は今」的な存在になっていました。
先日YOU TUBEで観たバッハの協奏曲では若い頃よりさらに輝きを増した、ブリリアントで
それでいてバッハの緻密な世界を崩さない素晴らしい演奏にノックアウト!
まるで、行方のわからなくなった若き日の恋人を探すような勢いでラベック姉妹のCDを
検索しました。そして、彼女達が自主レーベルを立ち上げて、すべてラヴェルの曲から
成るCDを出したと知り早速購入することに。
あの「ボレロ」が2台のピアノとバスク地方の打楽器で収録されています。

彼女達の生まれはフランスでもスペインに近いバスク地方のバイヨンヌ。
ラヴェルもバスク人の血が流れている作曲家。
「バスク女」ラベック姉妹の弾くボレロは素晴らしいとたくさんの批評家が書いています。
今から届く日をワクワクして待っています。。

追記
  バスク地方の名産のひとつが山羊の乳で作るチーズのオッソー=イラティ。
  もしうちが山羊を飼っていてこのチーズを作るなら絶対に名前を「プティ・ラベック」と
  命名しただろうな.......。



ナチュラルチーズ嗜好実態調査報告書
昨日、(社)中央酪農会議から、チーズ製造者向けに届いた130ページ弱の資料です。
牛乳の生産振興事業の一環として補助事業として発行されたものです。

とてもアンケートにも消費者が熱意を持ってお答えくださったことが伺えて、かなり我々
生産者にとっても有益な資料でした。
また私達にとって今までやってきたことの確認と同時に今後の指標になる貴重な記述も
多々見受けられました。
ナチュラルチーズは現在約8割が輸入されています。しかしバターと同じく、EUの補助金
削減やロシアなどでの輸入増加や豪州の干ばつで逼迫しており、国産品のレベル向上
もあり今後、国内生産が伸びることが期待されています。
また、低迷する牛乳消費に比して、チーズの需要は伸びています。

私達のような小規模のチーズ工房に対して消費者が望むことは
  
     ① できればもう少し安く。手に入りやすく。
     ② 安全面から原料や製法の情報をしっかり表示して欲しい。
     ③ 食べ方なども教えて欲しい
     ④ インターネットなどで作り手のことを教えて欲しい

などとても具体的な提言がありました。
私事で恐縮ですが、③についてはもうすぐ出来上がるミニレシピブックを作って本当に
良かったと思います。

また、この本で繰り返し述べられているのは「ヘビーユーザーを大切に」ということです。
ナチュラルチーズが国内で普及してまだ日が浅いこともあり、全ての人が手を出すわけでなく
本当にチーズやその周囲の食文化(ワインなど)に関心の高い消費者によって、日本の
チーズ文化は支えられています。
(今回のアンケートの有益な情報もヘビーユーザーのチーズへの愛情の賜物と感じます)
プロモーション効果もヘビーユーザー相手のものの方が効果が高いという調査結果も
記載されていました。

ベーベ工房のモツツァレラチーズとリコッタチーズを作るのは夫です。
私は企画、デザイン、販売促進などを手がけています。今後、よりおいしく
安全な「ベーベ工房のチーズ」を作り、より差別化をはかり消費者や
お取扱店の信頼に応えたいと思います。

大変なことではありますが、この冊子のアンケートにもあるように
ヘビーユーザーの方々の応援やアドバイスや質問は本当に支えになり
励みになってきました。そのような方々がおられるからこそミニレシピブックもできました。
ナチュラルチーズほど作り手と販売者、消費者の熱意と食への愛情が三位一体で健全な
成長を遂げた部門は、国内の多くの食品のなかでも多くないと思います。
それがこの冊子から伝わったことは大きな喜びです。

このブログは半分は私の趣味ですが、もしベーベ工房のチーズの情報が正しく伝われば
これに勝る喜びはありません。また、チーズという食文化を愛してくださる方々の
ためにもユーモアやウィットや芸術的感性は磨いてゆきたいと思います。
それがベーベ工房のスパイスになれるように。
「う」のファイル
「う」というのはうまいものの略です。
お取り寄せやいただいておいしかったものの住所が記されたパンフレットやしおり、
素敵なラッピング、雑誌などで気になった食べ物情報を切り取って私が保管している
ファイルのことです。
大好きな作家、向田邦子さんが生前、コレクションされていた「う のひきだし」のネーミングを
真似をさせていただきました。

私のこのファイルも10年以上たち、けっこうな量のものがコレクションされています。
(結婚前から保管していたものもあります)
クリアファイルがアコーディオン型に変形しています。(爆)

このファイルを手に取ると、つくづく自分が食べることやその周囲のことが好きだと実感します。
また、ベーベ工房の製品の説明文を書くときや、しおりなどを作成する時のデザインや意匠の
貴重な資料にもなっています。

私だけではないと思いますが、おいしいものが好きな人間は自分がおいしくて、幸福感を
感じるものを誰かに差し上げたいという気持ちがあります。
私もそうやって友人においしいもものをいただいてきましたし、逆にギフトで差し上げたり
しています。そうやってセレクトしたものを喜んでいただくと、なんだか誇らしい気持ちに
なります。

ベーベ工房の仕事も辛いことや不安がないわけでありませんし、何かしら葛藤はしています。
そんな中でも、気持ちを前向きに頑張って来られたエネルギーの素は、
お客様やお取引先の応援と理解、それから私がなにより食に関すること全てに
興味があり大好きだという気持ちです。

この分厚くなった「う」のファイルは生産者として、またひとりの消費者としての私の原点です。
まさか1997年にこのファイルにコレクションを始めた時は、自分の中でそれほどの存在に
なるとは予想もしていませんでしたが。
変わってゆく基準(スタンダード)
昨日、報道ステーションで放映された、穀物に対する投機、そして「食糧があるのに価格が
高騰して米が手に入らない」という衝撃的な現象は、かなりショックを受けました。
原油価格の異常な高騰にしてもしかり。OPEC諸国の責任ではなく、ひたすらテキサスのごく
一部の市場での異常な投機熱が原油高・ガソリン高などで日本人の生活を直撃しています。
また去年NHK特集で放映されたバイオ燃料の材料に使われるトウモロコシのニュースも
ショックでした。何せ日本の商社が買い付けに行ってもトウモロコシがないのです。

我が家では牛用の配合飼料の中のトウモロコシはすべて遺伝子組み換えのないものを
ブレンドしていましたが、この2月から在庫が微少になったため配合飼料の成分を変更し
お取引先に説明をいたしました。
世界的に穀物が投機の対象になり、また温暖化やバイオ燃料の影響で今までのように
安定した量を手にすることが困難になりました。
また10年前では予想もできなかった事態に、遺伝子組み換え作物(GMO)についての
見解も微妙に風向きが変わっていますし、私自身も以前のようにGMO=悪と一概に
言えなくなっています。

安定した収穫量、害虫や除草剤に強くむしろ自然負荷の少ない品種の開発など
GMO作物のメリットも以前より冷静に議論されているようです。
食糧危機も決して対岸の火事ではない現在の日本。(自給率39%の惨状です)
生産者として基本的なところから知識を得たいと思っています。
長期的に見て、一部をGMO作物にしてかたくなにNON-GMOだけにこだわらない方が
食糧の安定供給に役立つのか......。

ここからは私見です。
日本では消費者団体が「遺伝子区組み換え作物はNG」を強く謳っていて非遺伝子組み換え
(NON-GMO)であることが一つの安全性の基準になり、またプラスの評価となっています。
そのことにはなんら異論はありません。
ただ、今後、食糧事情がかなり逼迫した場合、現在と同じ基準(スタンダード)があてはまるか
どうか、かなり懐疑的になっています。
まず、飢えない程度の量を確保するのが先決ではないのかと.....。

「絶対にNON-GMOのものしか食べてはいけない」というのは正しい答だと思います。
ただ、それは現在の食糧事情から見ると、まともなモラルで市場が支配され、ここまで
異常気象がなかった、(わずか10年前の)今から思うととても贅沢な基準であるような
気がしてなりません。




予約生産のありがたさ
ベーベ工房のチーズとヨーグルトはほとんどがお取り扱い下さるスーパーなどに、直送させて
いただいています。
また週1回ずつヨーグルトとチーズを生産していますが、全て予め納品数をFAXでお知らせ
いただきいわゆる予約生産をさせていただいています。
これは本当に有難い方法で、牛乳は組合に出荷している私達は、牛乳を無駄にすることなく
ヨーグルトとチーズを製造することができます。
このシステムをとらせていただけたからこそ、私たちがここまでやることができています。

バターだけではなくバイオ燃料や豪州の干ばつの影響で穀類や大豆の価格も高騰し、
さらに四川省の大地震などもあり今までのような農作物の安定供給も危ぶまれています。
飼料作物の高騰もあり、個人的に最近は食糧の自給率アップのことを本気で考えるように
なりました。

そんな中、ある小さなパン屋さんのHPを見つけました。
その店主が「パンの価格を上げさせていただくことになりました。これをきっかけに全て
国産小麦に切り替えることとしました」と書いておられました。
そして「私達ができることは小さいですが、少しでも小麦の自給率をアップさせたい」とも。

本当に小さな一歩でもこうやって業務用に使われる方が、予め予約という形で年間に使う
量を予め農家(もしくは所属の農協に)予約するシステムがもっと一般的になり、生産農家の
収入の安定&アップが確実に見込まれればかなり小麦や大豆の自給率も上がると思います。
天候不順などもあるので使う側は次の段階の材料の入手先を書確保する必要はありますが。

1993年に米が不作でタイから輸入米が入ったことをきっかけに、実家では一年分のお米を
生産者達が作るグループに予約して作ってもらっています。
全国に生産者の会員がいて九州のお米も東北のお米も新米の季節になると届きます。
あの「米騒動」はかなり強烈な印象で、あれからこのようなシステムで米を予約している方も
おられるかと思います。
あの頃はまだ独身で会社員で、予約で作るシステムがどれだけ生産者に有難いか想像でき
ませんでしたが。

外国産の方が安いから。という理由だけで今までは輸入ばかり増えて自給率は40%を
割り込むまでに落ち込みました。
でもどんどん食糧危機に備えるかのように米や小麦の輸出規制をかける国が増える中
今までのようにお金さえ出せば食糧を輸入できる時代ではなくなりました。

どこの国でも最良の農業政策は「安定継続的に農業が続けられること」だと思います。
あの小さなパン屋さんHPは予約生産というかたちもこれに貢献できる、強力な手段に
なりうるのではないかとうことを考えさせてくれました。


堺雅人さん
現在、大河ドラマ「篤姫」で篤姫の夫、13代将軍家定を演じている堺雅人さん。
日本の俳優で一番私が好きなのがこの方です。
知的で物静かなイメージの堺さんが「人並みではない」という評価の将軍・家定を演じる
と知った時は、正直「何で~」(悲)という思いでしたが、さすがに彼の優れた演技力で
リアリティのある家定になっている印象です。

堺雅人さんの名を一気に高めたのは、何といっても2004年度の大河ドラマ「新撰組!」の
山南敬助役でしょう。
私もそうなのですが、実際の山南像を離れて

  山南敬助=堺雅人のイメージとなっているファンは多いようです。

2004年のNHKの視聴者によるアンコールに応えて、極めて異例ですが堺さん扮する
新撰組総長・山南敬助が切腹する「友の死」(新撰組!第33回)は1回がまるごと
再放送になりました。

「友の死」は録画してその後も何回か観ているのですが。三谷幸喜さんの時間を細やかに
刻んでいくような切迫感のある脚本。それに応えた俳優達の演技によってこれ一回分が
舞台にかけられそうな濃密なドラマになっています。

物語は、新撰組に価値観の違いを感じるようになった山南敬助は恋人・明里(鈴木砂羽)と
隊を脱走。局長の近藤勇(香取慎吾)は、死罪を免れせてやろうと密かに尽力するのですが、
山南はあえて自首。新撰組の駐屯地に戻り、その夜隊士たちの見守る切腹する、という
ものです。
45分のドラマの中に、静かな諦念の境地に立った山南、新撰組結成以前からの同士として
内心は何とか助けてやりたかった、近藤勇と土方歳三(山本耕史)と沖田総司(藤原竜也)。
恋人の明里。さまざまな人物の思いが交錯して非常に重厚なドラマとなっています。

堺さんの山南は恋人を友人をすべてこの世に残して、潔く脱走は死罪という隊の規律を
受け入れて切腹してこの世を去ります。
山南のこの世での最後の希望は、恋人・明里を隊士に故郷に送り届けてもらうことと
親友の沖田総司の手で介錯をして欲しいということででした。

この「友の死」が放映された時、私の臨月近いお腹には息子がいて、いつになく「いのち」
というものを本能で感じていた時でした。
それだけに山南の死が一分一秒ごとに迫ってくるこの回は非常に肌に感じるものでした。

この回の収録が終わった時、堺さんも香取慎吾さんも山本耕史さんも口がきけないほど
消耗して役が乗り移ったようだったと後にインタビューで読みました。
堺さんの静かな凄みのある演技の素晴らしさは私の稚拙な表現では表せないほどです。

「篤姫」では今度はちょっと尋常ではない家定を演じる堺さん。
コメディぽい演技も見られるかな、と楽しみにしています。

2005年だったかバラエティー「ハニカミ」に出た堺さん。相手のタレントと恋人としてデート
する、といった設定を見事にリアルになり切ってこちらがドキドキしてしまいました。(笑)
根っからの役者さんなんですね。

自給飼料について
我が家は牛の飼料として、もちろん配合飼料(安全性を考えたオリジナル配合)
など購入する飼料もありますが

   飼料用トウモロコシ(コーンサイレージ)  
   牧草(全ては自給ではまかなえませんが)
は堆肥を還元した畑で作っています。
面積は トウモロコシ5ha  牧草7ha くらいです。

牧草は春と秋に種を播き、2回の収穫。トウモロコシは5月くらいまでに何回か播き、お盆の頃と
9月に収穫。というスケジュールです。

急激な飼料の高騰を受けて、自給飼料の作付けを増やす酪農家も増えました。
一時は購入飼料が安定した価格で推移していたので、牧場の規模を拡大して牛を増やし
飼料を作ることを止めて、全て購入飼料に切り替えた牧場もありましたが、今年度の
補助金支給の要件を見ると、明らかに自給飼料を一定面積以上作っている農家への支援が
手厚くなっています。

また、コスト面だけではなくバイオ燃料の普及でトウモロコシや大豆が世界的に不足している
という10年前では予想できなかった事態になっています。
我が家では先代(義父)の代からずっと自給飼料を作っています。
コストのこと、堆肥の還元のこと、土地を荒廃させないため、という理由に加え、ベーベ工房を
始めてからはさらに、きちんと消費者に説明できる安全な飼料で牛を育てたい、という
「加点要素」的な面からも夫は多忙を極めながらも、飼料を作っています。
(この説明のできる飼料があればこそBSE騒動も乗り切れたと思います)

家畜飼料どころか人間が食べる穀物が世界的に逼迫する状況が続くと予想されます。
今後は、コスト面だけではなく「食資源」をより多くの人が分け合えるように、自給飼料の
増加は求められていくと思います。またそのようなモラルを持ってたとえ、人手を借りてでも
自給飼料の穀類は作りたいと思います。

農政・食生活ジャーナリストの山本謙治氏(通称やまけん)のブログには100%岩手の
牧草などを食べた短角牛の肉のことが紹介されていました。
これからは自給飼料率の高い畜産物にはプレミアム的な価格反映がなされてくるかもしれ
ません。環境や食資源の未来を考えると、例え多少価格が高くても「未来への投資」的な
消費者の納得も得られるように思います。

農業大国は輸出規制をかけて農産物を戦略物質化し始めている国が多くなりました。
戦略物質と言えば聞こえはいいけれど、要するに兵糧攻めです。
日本も早急に自給率をアップさせないと国際的な発言力も低下し、深刻な食糧危機を
遠くない将来招くように思います。

「地球にやさしい」は環境だけでなく安心して食べるための手段でもあると思います。





ガーシュウィンのこと
アメリカの作曲家ジョージ・ガーシュウィン(1898~1937年)。
私が好きな作曲家です。

バッハやショパンほど好きか?と聞かれればそうでもないのですが、何というのか
「ガーシュウィンの音楽じゃないとダメな気分」という時がたまにあります。
けだるいような、それでいて幸福感があって、でもちょっと感傷的な気分のことって
きっと誰にでもあるのではないでしょうか。

ガーシュウィンの音楽の特徴はなんと言ってもブルーノート。
説明するとブルースなどに使われる音階で3音と7音つまりミとシが半音ずれた音を
持つ音階です。
だから端正というよりちょっと着崩したようなイメージかな。

CMでもよく使われる「ラプソディ・イン・ブルー」やジャニス・ジョプリンもカバーした
「サマータイム」「ピアノ協奏曲ヘ長調」などが代表作です。

私がガーシュウィンを好きになったきっかけは1980年代に美人姉妹のピアノ・デュオで
人気だったラベック姉妹のレコードです。
オーケストラではないピアノによるこれらの曲は彼女たちの音楽性と魅力と相まって
忘れられない印象を残してくれています。

「ブルー」というのは青いという意味ではなく「ブルーな気分」のブルー。
けだるくて、物憂くて。
ガーシュウィンの魅力はそこに凝縮されてます。

彼はアメリカ人ではなくユダヤ系ロシア移民の息子でした。
その彼がアメリカを体現する曲を残したことに不思議さを感じています。

ラベック姉妹のピアノ協奏曲はCDはないようです。もう一度聞きたいな....。


それって「蟹工船」じゃないか?
「蟹工船」。1929年発行の小林多喜ニのプロレタリア文学です。
新聞などでも報道されましたが、この本が現在、若い世代に読まれ。新潮社が5月に5万部
増刷したそうです。
申しておきますと私自身はリベラル派ですが、特定の政治団体や思想には一切関わって
おりません。

若年層のワーキング・プアやプレカリアート(失業者や不安定な雇用形態の労働者のこと)
という言葉叫ばれて久しくなります。
仕事に夢を持つどころか、その日暮らしがやっと。格差は広がる一方で絶えず貧困という
生きる上での根本的な部分におびえる若い世代に少しずつ、かつてのように国まかせでは
なく独立系のユニオンなどを立ち上げて自分達の生きる権利を守る活動を始めた、という報道
もされています。そのような若者を中心に「蟹工船」やマルクスの「資本論」がじわりと浸透して
いるようです。

選挙の投票率は低く、政治にも無関心。でも自分の生活を守るためにはもう政治家任せでは
どうにもならない。そのような空気が少しずつ流れ始めたことは私はとても頼もしく思えます。
私個人も、年金のことやあいかわらずの役人による無駄使いを見ていると自分の人生を
守って未来を開くには時には声を出すことが、必須条件だと思います。

特に私より一世代下の就職氷河期にぶつかった世代。「失われた世代」」とも言われる30代の
若い労働者層を国がきちんと夢を持てる環境にしなかったことの責任は大きいと思います。
大学までそれなりに努力した学生が10も20も就職で落とされ続ければ自信をなくして
当たり前。それをひとくくりに「バイト」「ニート」と言ってしまった政治家にもこれだけ
若い世代の、貧困層が増えた責任を感じて欲しい。

私は40代でとりあえず食べられるだけの夢のある仕事を夫とやっていますが、きちんと自分の
アンテナを張って人生を切り開かないと安定した将来は望めません。
2001年のBSE騒動の時が私にとっての「これって蟹工じゃないか?」の時でした。
牛が死亡しても処分してもらえず、そのような環境でおいしく安全な牛乳を出荷しろと
言う組合のお達しにさすがに頭にきて、県の畜産課に電話をして「私達は奴隷では
ありません。食の衛生や安全と言うならせめて死亡牛の処理は早急にやって欲しい」
とお願いしました。あの出来事は一つのターニングポイントになりました。


「蟹工船」が売れていると知った時は、最初軽いショックを受けました。でも考えてみると
やっと若い人たちが生活を守るために、自分の言葉を発するようになった。そのバイブル
が後に拷問で若い命を閉じることになった小林多喜ニの「蟹工船」なのでしょう。
右でも左でもなく、誰でも自分の人生を守り将来を開くのは自分の勇気でしかありません。


追記

残念なのはこういうプレカリアートの若い世代から法律違反を繰り返して、搾取していた一人が
私より1歳上でしかない折口雅博氏(グッドウィル元社長)だったということ。
同世代の社長が下の世代を支えるどころか苦しめていたことは本当に情けない思いです。
グッドウィルの法律違反をウィキペディアで見ていたらあまりの膨大さに唖然としたものです。


バターはどこへ?
4月30日に若林農水相がバターの増産を大手4社に要請し、大手4社も応じる意向で
5月に増産するという報道がされました。(このブログにもアップしています)

また独立行政法人「農畜産業振興機構」が5月に業務用バターの輸入を前倒しすることも
既に報道されています。
(但し、業務用バターなので乳業メーカーに回されるので一般向けのバター不足にどこまで
 効果があるかはわかりません)

ところが、5月も中旬を過ぎた現在もいわゆるナショナルブランドの雪印やよつ葉などの
一般向けバターが順調に店舗に並んでいる状況ではありません。
行きつけのスーパーでも相変わらずバター不足を説明する広告が売り場に貼られ、一個も
バターは見当たらないと状態でした。担当に聞いてみたところ、「毎日発注はしているが
いつ入荷するか全くわからない」とのことでした。

先日、牛乳の販売をまとめる公益法人の役職の方と電話で話しました。
バター不足のことを伺うと順調に増産していると状況ではないニュアンスのことを
仰っていました。
そして「お宅も牛の数は増えてないでしょう?」と質問されました。牛乳不足が全てだとも。

相変わらずの牛乳不足~バター不足の根本の原因は改善されていません。

バターが不足するならバターを増産しろ。一般の方はこのように思って当然です。
ただ、バターを作って採算を合わせるには条件があるのです。
説明しますと、バターは牛乳の乳脂肪から作られます。
1キロの牛乳からはその3%から4%しかバターは製造できません。
バターの他に脱脂粉乳やチーズ(ゴーダチーズなど)を抱き合わせで作り、かつ売れないと
大半の牛乳を廃棄することになり、採算がとても取れないのです。
(例を述べると人気のカルピスバターはカルピスを作る過程で抜いた脂肪分からできます)

また5月になるとそろそろ暑くなり飲用牛乳の需要が伸びます。2年前に牛乳余りで牛を
大量に殺処分したこと、飼料の高騰で廃業も多く、残っている酪農家も牛を増やせない、
という状況なら、牛乳不足でいくら大臣がバターの増産要請をしても思うようにバターを
製造できないスパイラルがあるのだろうと感じています。

ただ、私が不信が残るのが、乳価への影響もあるバターの増産要請について乳業メーカー
がどのように対応しているのか、きちんと生産者団体からも説明の紙一つ未だに手元に
届いていないことです。
ただでさえ、牛乳の消費が伸び悩みいわれのない牛乳バッシングもある昨今、きちんと
正しい情報を提示しないと、取り返しがつかない酪農不信を消費者に持たれるのでは
ないかと私は非常に懸念しています。
その後の人生.
大学時代はラグビーの試合を時々観戦していました。
特に人気の早明戦。自分の学校でもありますので毎年行っていました。
私が大学時代は、特に大学ラグビーの人気が最高潮に達した時でした。

 早稲田には 本城と吉野の黄金のバックス。
 明治には  重戦車FWとバックスには小林と若狭。
 同志社には 大八木にあの平尾。

私はW杯でオールブラックスなどの圧倒的な強さを目にしてから、日本のラグビーに関心が
薄れてしまい、めったに最近はTV観戦もしなくなっていました。
そんな中、2005年の秋、朝日新聞の土曜日の経済などの別刷りの「フロントランナー」という
シリーズに「角日出夫」という若き社長が大きく出ていました。
見たことのない名前の写真の下には、新日鉄釜石の真紅のジャージーを着てトライを決める
彼の若き日の写真が出ていました。
旧姓 小林日出夫。

私は思わず「あっ!」と声を上げていました。(笑)
あの明治の名SOの小林さんだ..........。
何回も国立競技場で歓声を送った.......。

小林日出夫と言えばラグビーファンならご存知の大スターでした。
目黒高校~明治大学~新日鉄釜石で全て主将を務め、全てで日本一になっておられます。
もちろん日本代表でした。大学で私の1学年上で、1年生からレギュラーでした。

現在、1987年に首の故障で現役を引退後、奥様のご実家に婿養子となり義父の興された
「チタカインターナショナル」を率いられる社長として成功しておられます。
「パステルのなめらかプリン」の会社といえばご存知の方も多いのでは?

彼が1997年に義父から社長を譲られた時、会社の経営状態は大赤字の最悪状態。
銀行も手を引いたところがあったようです。
それをかつてのスター選手が徹夜で再建策を練り、全てのお店を回ってコミュニケーション
を従業員と図り、早くも翌年には黒字に転換。
なめらかプリンのヒットもあり右肩上がりの成長を続けています。

インタビューに答えて、彼は「新日鉄時代に決算書の読み方、報告の仕方など先輩に
しっかり教えてもらったから社長業が務まった」と語っています。
V7戦士としてラグビーも頂点を極めながら、しっかり仕事もなさっていた姿勢に感動しました。
彼は現在は、ラグビーとは(スポンサーになる以外は)関わっておられません。
完全に実業家に転進されたのです。

あの頃、ラグビーはアマチュアしかなく、名選手といえど社会人になればサラリーマン。
角社長の他にも、所属の会社で重役に出世された方もおられます。
テニスの伊達公子さんのような生き方も好きですが、その後の人生を努力で成功された
ラガーマンたちは本当にカッコイイ!と驚嘆しています。

早稲田の大スターだった本城和彦選手はサントリーへ。7人制ラグビーの監督もされました。
仕事ではサプリ飲料の「ダカラ」のあのひょうきんなCMを手がけられ商品を大ヒットさせて
おられます。

あの大声援に包まれた早明戦。二人の大スターが食の仕事をやっておられ、スタンドから
友人と歓声を送っていた私も食の仕事をしています。人生は本当に面白いです。


  
育成牧場へ.......。
5月14日に3頭の去年生まれた若い牛たちを、浅間山のふもとにある県の育成牧場に送り
出しました。約1年後に向こうで種付けをしてもらいお腹に子供を宿して帰ってくる予定です。
全ての若い牛を預けているわけではありませんが、毎年何頭かは育成牧場にお世話に
なっています。
メリットは何といっても夏場は広々とした牧草地を歩いてたっぷり青草を食べられることです。
浅間牧場帰りの牛は足腰がしっかりしている気がします。

水曜日に農協が大型トラックで牛を運ぶために来てくれました。
3才の息子は、朝食の後保育園に行くまで牛舎で遊んでいるのですが、牛を運ぶのを見て
  「ママ、モーちゃんお肉になっちゃうの?」と不安げ。
私が「お山の牧場で育ててもらうんだよ。来年帰ってくるから大丈夫」というと安心して
保育園に行きました。

夏の暑い時期も浅間の麓は朝晩かなり涼しくしのぎ良い気候です。
以前、我家に来られたお取引先のバイヤーさんが、主のいない子牛用の独房をご覧になり
「あそこの牛はどこに?」と質問されました。
私が、「ちょっと山に避暑に行っております」とお答えしたら爆笑されていました。

今年ももうすぐ暑い夏がやってきます。育成牧場の牛が羨ましい...........。(笑)

フードファディズム
まずこの言葉の定義から。「ファド」は英語でのめり込む、という意味です。
 
 「食べ物や栄養が健康や病気に与える影響を過大に信じること」 となっています。
科学的に立証されたことより、その影響を過大に信じ固執すること、と追記があります。
フードファディズムに走る人々の間で槍玉にあがることが多いのが、肉・卵・牛乳・砂糖など。
(食品添加物は誰が見ても体に良いと思われないのでここではあげません)
そして彼らが好むのが玄米食・有機野菜による菜食・卵を食べるとしたら平飼の有精卵のみ。
そしてオリーヴオイルや天然塩など。

私は人の食生活のことには触れません。普通のものを普通に食して(我家は酪農家ですが
乳製品を過剰に摂取はしていません)お陰さまで家族3人いたって元気で子供も
アレルギーも一切ありません。42歳で私もつわりも高血圧もなく元気に出産できました。
(自慢に聞こえたら申し訳ありません)
食に対してバランスの良いものを肩の力を抜いて、作り手に感謝して食べるというのが唯一の
信条です。

私がフードファディズムと言われる人々と感覚の違いを感じてしまうのが、「科学的根拠も
ないまま特定の食品を感情的に賞賛したり、あるいは罵倒する」という所です。
そういう方のブログを読んでいると、うっかりお子さんなどにおやつもあげられないし、自分の
ポリシーに反する食物は毒のように言う姿勢に疲れを感じます。
もし長生きできてもあそこまでとげとげした心の人生を私は選びません。

私は一切サプリメントも取りませんし、一つの食品を過剰に思い入れすることもありません。
原点は中学生の頃の紅茶キノコブーム。(懐かしいですね)
母も私も何か気持ち悪い、と思いましたがご近所でも大ブーム。
ほどなく効能が嘘だと言われて姿を消しました。

もう一つは雑誌に連載された故宮本美智子さんの「世にも美しいダイエット」という本です。
綺麗なイラストが好きで何気に雑誌の連載を読んでいましたが、バターと小松菜が主食で
大量のオリーヴオイルと天然塩を摂取するという食事に何か違和感を感じました。
もちろん宮本さんが1997年にまだお若くしてお亡くなりになったのは食事だけが原因では
ないのだと思いますが、あのレシピに感じた、不健康なイメージは私に食は流行に
惑わされるものではないということを教えてくれました。

ベーベ工房をブログで紹介下さった、リンク先の安中千絵さまは管理栄養士でおられます。
彼女はポリシーの中で素敵な言葉を述べておられます。

    「もちろん体への働きは考えますが、食によってもたらされる文化的・精神的楽しみも
     同じくらい重要だと考えています」 

これほど私の食に対する考えを適切にあらわしている言葉はありません。
程よいバランスのとれた食に対する考えをお持ちの方は文章もやさしく心に響くような
気持ちがします。

 
9冠ベビー誕生によせて
2005年度の三冠馬ディープインパクトと1997年の年度代表馬の名牝エアグルーヴの間に
元気な牝馬が誕生したとインターネットのスポーツニュースで報道していました。
父がGⅠ7勝、母がGⅠ2勝。合わせて9冠ベビーと言われています。

毎年たくさんの産駒を送り出せる種牡馬と違い、母馬は順調でも毎年一頭しか産めません。
少ないチャンスにもかかわらず、エアグルーヴは自身は1997年の天皇賞・秋を勝ち、

ダイナカール(83年オークス)~エアグルーヴ~アドマイヤグルーヴ(03年エリザベス女王杯)

という母娘3代のGⅠ競争制覇という大偉業を達成している日本の誇る女系です。

ディープインパクトについては競馬ファンでなくても名前をご存知の方も多いでしょう。
3冠に加え天皇賞、有馬記念などを勝った歴史的名馬です。 
父はあの不世出の大種牡馬サンデーサーレンス。

これだけの血統の9冠ベビーですから、当然期待も大きいと思います。
もし、走らなくても母馬としての期待もあるので、牧場としても牝馬が生まれて万歳でしょう。
(注; 牡馬の方は高く売れてレースでも賞金を稼ぐ可能性が高いのですが、本当に良い
    血統の場合、繁殖に期待がかけられる牝馬を喜ぶ牧場が多い)

それにしても........。最近GⅠレースを勝つ馬のほとんどがサンデーサイレンスの孫ばかり。
父の父 サンデーサイレンス。
母の父 サンデーサイレンス。

ため息が出て憎らしくなるくらい凄い種牡馬だったと思います。(9冠ベビーもサンデーの孫)

そんなサンデーサイレンスが2002年に死去してからもその血の輝きが増していくことを見て
感じるのは、「あの馬が生きていたら」「彼の血が残っていたら」の無念な思い。

「彼」とはそう、1998年の天皇賞・秋のレース中の骨折で非業の死を遂げた、希代の逃げ馬
サイレンススズカ......。

あの最後のレースに騎乗していた武豊ジョッキーも今でもたまに思うそうです。
「サイレンススズカの子供がいたらどんな馬だったんだろうか....」と。

とにかく9冠ベビーも無事に成長して欲しいと願っています。
偉大な父と母の面影を彼女自身の走りに見たいし、彼女の子孫にも見たいです。

  
 


改訂版 酪農家による乳製品製造ガイド
(社)中央酪農会議発行の冊子です。
2006年に改定版が発行されました。

初版の1998年以来、乳製品を取り巻く状況は大きく変化しました。
2000年に雪印乳業の食中毒事件が起こったことを受け、細菌検査のこと、PL法のこと
さらには食品を製造するものの行動規範までページを割いてありました。
また販売(マーケッティング)についてかなりページを割いているのも改定版の特色です。

販売のことを1998年版に比べて詳しく専門的に書いているということは、酪農家が製造許可
を取り製造をしても失敗したケースが多い現実を厳然と示しています。
この冊子ではグラフや図を用いてかなりマーケッティングを事前にすることを薦めています。

これから許可を取り、施設を作って販売をしたいと考えておられる酪農家はこれを見ると
たじろぐかもしれませんね。
11年何とかベーベ工房をやっている私ですらこんな正論を見ればびびります。(笑)

マーケッティングといえばそれを専門に研究している学者も多いので確かに考えれば
難しいのですが、自分の製品のいくつかをプロとして販売したいというなら、あまり難しく
考えすぎない方が賢明です。何か現場の叩き上げぽい言い方ですが、理論は理論でしか
ありません。

私のささやかな経験を以下に述べますと
  
① 製品のネーミング   呼びやすく暖かみのある親しみをもてるものであること

② 顧客の開拓   直売がしたいか店に卸したいかじっくりと検討すること
             少量生産だとコストが高いので品質を高めて安売店には出さない

③ DMやパンフレットは最初から作らないのが賢明。
          ある程度実績と信頼を作ってからでないと自己満足で終わり無駄遣いになる
          お客さんやバイヤーと相談しながら作るのが楽しい作業であること。

④ 販売戦略  学者ではないので難しく考えないこと。「おいしい」「デザインも可愛い」と
          認められるものを常識的な価格で出せば上手くいく、と強い意志で臨む。
          営業は10年やっても度胸がいる。消費者に喜んで食べてもらいたいという
          気持ちを持つ。シンプルに考え理論にがんじがらめにならないことを薦める。

何より、製品の品質にもオリジナリティは必須条件です。例えばヨーグルトですが、
ベーベ工房の「売り」は低温殺菌の自家産牛乳をノンホモで加工し、脱脂粉乳や添加物
は一切使わない生乳100%ヨーグルトである、ということです。

顧客の求めるものを知るには、普段から出したいレベルのお店で買い物をして、商品を見て
価格やデザインなどを肌で覚えることも大切です。
また、取引と別にそのようなお店の社長などに、意見を聞きながら試作品の味やデザイン、
価格等のアドバイスを適宜受けることは有力なマーケッティングとなると思います。  
あまり理論から入らず自分の出したい製品から自分なりの理論を作るべきです。

この冊子は中央酪農会議に申し込めば送付してくれます。酪農家で加工を本気で
やりたい方は是非。 

追記 
    書いていて11年もベーベ工房を始めてから経ったことに感慨を覚えます。
    改めてお客様とお取引先に感謝します。
    今後も初心を忘れず努力したいと思います。
    また、若い頃から本を読み何かを表現することが好きだった私がそれを
    現在の仕事に生かせていることを幸せに感じています。
  
産地直送
ベーベ工房の製品はほとんどが(ごく一部、理解のある中間の冷蔵会社さんにお世話になって
おります)取り扱い店に直送で納品させていただいています。
理由は個人のささやかな規模の生産者のなので、扱い量が少量であること、また週1回又は
隔週1回の納品であること、小規模生産者なのでなるべく中間を省いてコストを削減すると
いったことからです。

ウキィペディアで地産地消のことを調べていたら、興味深い記述がありました。
要約すると、大都市圏では耕作地が少ないので地産地消は実際は不可能で産地直送
(産直)システムが大都市圏では地産地消となっている、ということです。

輸送システムの発達で、個人が簡単に冷蔵品を送れるようになりました。
ベーベ工房でも法人向けの輸送費で製品を遠くは広島まで出荷させていただいています。
バイヤーさんに「最近は東北からでも広島に翌日届きます。群馬はもっと近いから輸送の
ことは心配しないでいいですよ」と言われて、産地直送システムは小規模生産者が
自分の手で販売ルートに乗せる時の強力なシステムになることを実感しました。

私は安全でおいしい食べものは決して安くないし安易に安売りしてはいけないと思いますが、
それでも消費者がリピートしやすい価格にできるようにコストは生産者が削減する努力も
必要だと思います。

なるべく中間業者を通さない、販売のための努力も自分達の知をもって努力する、できれば
文字通り自分達の手で荷造りをして出荷する、といったことでコストも削減できますし
ハード面もソフト面も生産者と消費者の距離を縮めること、それが物理的な距離を越えた
本当の「産地直送」だと考えています。

マスコミでも有名な農業流通の評論家のブログを読むと、地方の農産物を売り込むのに彼に
依頼して販売戦略を練ってもらう地方自治体が多いことに驚きました。
ベーベ工房と組合規模の肉の出荷では規模が違うので一概に言えませんが、産直システム
をとるなら物流のみを産地直送にするのではなく、販売面も責任を持って有名人に頼らず
自分達の手でやることが消費者の心を動かして理解を得てゆくことになると考えています。

多少大げさな言い方ですが、小規模生産者の産地直送は、製品を作ることにも売ることにも
心血を注ぎ製品と心中する覚悟くらいの強い意志は必須条件です。


ライアンの娘
1970年製作の巨匠デイヴィッド・リーン監督の大作映画です。
私はこの映画がお気に入りで、もう15年くらい前にVHSを購入して何度も家で観ています。
いつかこの映画のことを書きたいとずっと思っていました。

物語は1916年の英国の支配下のアイルランドの寒村が舞台。
美しい娘ロージーは遥かに年長の村で唯一のインテリで教師のチャールズと結婚。
しかし性的に満たれない彼女は、英国から独立運動の監視に赴任してきたドリアン少佐と
不倫の恋に。村中から白眼視されます。
その頃、アイルランド独立運動の闘士達が武器を密輸して嵐の夜荷揚げします。
ところが、ロージーの父、ライアンの密告で闘士達は逮捕。逮捕を命じたドリアンに憎しみは
集中し、密告者は不倫相手のロージーだと決め付けられ彼女は凄惨なリンチを受けます。
その後、ドリアンは自殺。ロージーが夫と共に村を去るところで映画は終わります。

アイルランドの荒々しく広大な自然を描いたカメラワークが素晴らしいです。
何より俳優の演技が見事です。初老の夫の悲しみを演じたロバート・ミッチャム。
ロージー夫婦を支え時に叱る村の神父を演じた名優トレヴァー・ハワード。
そしてこの演技でアカデミー賞を受賞した、言語障害のあるマイケルに扮したジョン・ミルズ。
何より、ロージーの微妙で激しい女心を演じたサラ・マイルズ。

特に物語の終盤、言葉を発せないマイケルの必死のジェスチャーから恋人、ドリアンが自殺
したと知らされる時のロージーの表情が圧巻です。
驚き、声に出せない嘆き、そして「やっぱり......」とこの事態を予想していたかのようなあきらめが
全て凝縮されたような表情。
まさしく「女優」としか形容しようのないサラ・マイルズの演技..........。
私は名場面がちりばめられたこの映画の中でも殊にここの場面に感動しました。

この映画は現在でこそ名画と高い評価を受けていますが、公開当時は英国とアイルランドの
険悪な関係もあり、手放しで評価できない雰囲気があったようでアカデミー賞も2部門のみの
受賞にとどまったといいます。

独立前のアイルランドと英国のような関係は世界中で現在でも見られます。
ロシアとチェチェン。そして中国とチベット。
もしそこに住む女性、それも人妻が占領国の将校と恋をしたら.........。
やはりロージーの恋のように無残な結末が待っているのでしょうか。

離婚を前提にチャールズとロージーは村を後にします。
でも忌まわしい事件を経て初めて夫の心の大きさに気づいたロージー。
もしかしたら、これから二人の本当の良い関係が新しい場所で始まるのかな、
と含みを持たせて映画は終わります。ちょっと心が救われるラストシーンです。

goo 映画
カーテンコールのこちら側
これは1991年に流行通信社から出版された、故高円宮憲仁親王(2002年ご薨去)の
エッセイ&芸術家たちとの対談集の題名です。
殿下は皇族、ということをおいても大変に芸術、とくにバレエやクラシック音楽、演劇に造詣の
深い方でした。対談集のゲストも森下洋子さん、江守徹さん、中村紘子さん、蜷川幸雄さん、
などなど錚々たる芸術家達と魂の底に響く、素晴らしい対談をされています。
また、巻頭の舞台芸術に関する思いを吐露されたエッセイも非常に感銘を受けました。

私はこの本を折々に手にとって読んでいるのですが、この本があったからこそ、ある程度
の量の文章をとりあえずまとめて形にできるようになったのです。
大学での法律の論文なら何とかまとめられたものの、祝辞など少しまとまった量の文章を
書こうとすると、以前はまず2行程度で脚が止まっていました。
書きたいことは心にあふれてもその思いを、読み手に伝える、という技術が習得できていな
かったのだと思います。

殿下のこの本は、いくつかの対談の中でも「あ、殿下はこの一文を仰りたかったのだな」という
歌舞伎で言えば「見得を切る」とでもいうべき表現をかならず、ひとつの対談の中で仰って
いました。
その表現に向かうまでの会話や表現の流れなどから私は多大な影響を受け
自分でも気づかないうちにひとつの文章を書く時に、「核」になる表現を模索し、
それを浮かび上がらせるような文章を書ける様になっていました。

2002年~2005年にチーズショップ「フェルミエ」さんの会報でエッセイを書かせていただく
という僥倖に恵まれましたが、拙い文章ながらも何とか自分の気持ちを読んで下さる方に
伝えることができたのは高円宮殿下のこの本があったからこそだと思っています。
現在、多忙な日々のなか息抜きのようなこのブログを書けているのもあの本のお陰です。

皇族だから、ということではなく2002年11月に47才のお若さで殿下がお隠れになった時は
心から寂しさを感じました。
殿下の舞台への鑑賞眼にはいつも心からの敬愛を捧げていました。
私にとって、思いや心を文章という形にすることができるようになった恩人は
高円宮殿下お一人です。



食糧を持てる国と持たざる国
中国の胡錦濤国家主席が来日中です。来日3日目くらいで福田首相がようやく餃子事件の
解明を要求。中国側の方が今回、かなり日本に気を遣っている印象はあるものの、
安全性云々いわれつつかなりの食糧を中国に依存している状況の日本側は、中国に
かなり配慮をしている印象です。

バター問題をきっかけに「食糧危機」が身近になった印象があります。すでにバイオ燃料
などで穀物市場は高騰。中国やインドは生活水準が上がり小麦の輸入を増やしています。
小麦不足は酪農でも感じます。牛の食べる小麦を挽いたときにできる「ふすま」は
県内のメーカーのものから東京の大手メーカーのものに変わりました。

外交の場でも「食を持つ国」の発言力は重みを増していますし、今後はその傾向が強くなると
考えられます。EU(15カ国)でも小麦、トウモロコシ、牛肉などの産出量がトップのフランスの
力は強く、自国の農業利益を守るためならEU共通農業政策の方針を変更させたり強権を
振るっています。他の国もフランスに食糧を依存している関係で、文句が言えないような
雰囲気です。

自由貿易を純粋に理論上で語れば、「食糧を作る国」「食糧を買う国」に分業可能でしょう。
でも、実際はお金を払えば自由に他国から食糧を調達できるという幻想は「食を持つ国」の
口約束になっているのが現状です。
アメリカでもEU諸国でも重要品目には補助金を十分に出して、生産量をあげ「外交上の
戦略物質」としているのです。(4/30朝日新聞の論壇より引用)
以前は「核の抑止力」といわれていましたが、世界的な食糧事情の大きな変化は
「食の抑止力」とでも表現したくなる、食を持つ国と持たない国の格差を大きくするような
予感がします。人間は食べないわけにはいかないのですから。

小麦や大豆、といった重要品目の品薄、高騰で日本伝統の味噌や醤油も値上げされました。
「輸入すればそれですむ」という方針から脱却しないと、バターどころではない味噌や醤油が
手に入りにくいというまさしく食糧危機が決してありえないことではないと、牛の飼料から
も見えてきます。

食の安全もこだわりもまず最低限の自給率を満たさなければ、何もかも「お一人様一個」
の恐怖の世界が待っているように思います。味噌や醤油がそのような状況になり
海外で報道されたらまさしく国恥ものだと思うのですが。
ベルトラン........早すぎた散文詩人
アロイジウス・ベルトラン(フランス 1807~1841年)の名前を知らない方でも
ラヴェルの超絶難度のピアノ曲「夜のガスパール」をご存知の方は多いと思います。
ラヴェルに多大なインスピレーションを与え、この曲の題材になった同名の詩集の作者が
夭折の詩人ベルトランです。
13才のときにその名を知って以来、30年以上経ってようやく日本語訳の「夜のガスパール」
を読むことができました。

ベルトランは生前はその作品が認められることはなく、出版社にいつも門前払い。
生前はついに一冊の本も出すことなく、貧困と病の中34才の短い人生を終えました。
唯一の詩集「夜のガスパール」が出版されたのは死後1年経った1842年でした。
その後、ボードレールなどによりベルトランの作品は再評価を受け、ラヴェルが作曲した
1908年頃にはベルトランの「夜のガスパール」の作品的価値は広く認められていました。

文学史的に言えばベルトランは韻文詩に対し初めて散文詩の分野を開拓した詩人と
言われています。詩の題材も死者、悪魔、妖精、霊魂と言った怪奇的・幻想的なものが
多く作品は退廃的で刹那的な幽玄の世界を醸し出しています。
ラヴェルはピアノでベルトランの3編の詩を音で表現して、この夭折の詩人の名を不朽の
ものにしました。
私の心の中でもベルトランとラヴェルはワンセットとなって独特の存在感を残しています。

散文詩はボードレール以降、ランボーやマラルメ、イギリスではオスカー・ワイルドによって
そのジャンルを確立しました。
日本では萩原朔太郎などが有名です。

ベルトランの価値はボードレールが自らの散文詩集「パリの憂鬱」の前書きで絶賛したこと
で認められました。
韻文詩全盛時代に、早く生まれすぎた悲劇の詩人だったのがベルトランです。

追記

  散文詩の名手だった顔ぶれを見るとデカダンな生涯を送った面々が多いことに驚きます。
  ヴェルレーヌとの同性愛スキャンダルで名高いランボー。戯曲「サロメ」などで認められ
  美しい妻と子がありながら同性愛で投獄されたワイルド。
  今でも「火宅の人」の評価もある朔太郎.........。
  
  散文詩は従来の文学表現に収まりきれない感性を持った詩人達のための表現形式
  なのでしょうか?ベルトランがもう少し生きたらどんな人生を送ったのでしょうか? 


参考文献
夫は20代のとき大学から1ヶ月スイスに研修に行き、牛の世話をしながらハイジのような
農家に住み込んでチーズ作りを見た事で、農家製の乳製品を作りたいという夢を持ったそうです。

製造許可を得たのが1996年。それまでチーズ作りを時には遠くまで見学に行き
本も専門書を買って勉強していました。
参考文献は手に入りにくいものでよくここまで集めたと感嘆しています。
具体的に挙げると

  
  ① 新説チーズ科学  中澤勇二&細野明偏  (平成10年再販) 食品資材研究会発行

  ② パスチャライズ牛乳  藤江才介著  (絶版 1991版 乳業ジャーナル発行)
     これは加工を志す人には是非読んでいただきたい名著です。
     すべての基本は牛乳、特に低温殺菌牛乳です 

  ③乳業技術 綜典(上下) (1986年発行) 農業技術普及学会
        百科事典のような分厚い本です。多分現在も入手可能です。
        夫曰く「加工を志すならこれを読むくらいの向学心は必要」という名著

  ④ 日本の牛乳はなぜまずいのか  平澤正夫著 (1998年草思社発行)
     かなりヒットした本。ただ出版社が倒産したのでアマゾンなどの中古であたって
     欲しいです。②の本の内容多く引用してあり、消費者サイトからのあるべき牛乳の
     姿をアプローチしています。

  その他、フェルミエの社長本間るみ子さんの「AOCのチーズたち」など他の多くの著作。
  チーズ専門書は数多く。


営業他の私の参考文献はいわゆるノウハウ本はゼロ。
 
   影響を受けたものとして
    ① 雑誌「エスクァイア」2000年10月号。スローフード特集

    ② GAIAという生き方 (2007年 自然食品通信社)
      2000年以来お世話になっている御茶ノ水GAIAさんのスタッフの物語

 その他パンフレットの製作のための美術書、デザイン関係の文献多数。

 書き出してみると、やっぱり夫はチーズやヨーグルトを本当に作りたかったのだと
 実感しました。

 質問などがあればお気軽にコメント欄やメッセージ欄にどうぞ。
 この記事は「資料」のカテゴリに入れておきます。
 

  
     

  
牛と味噌汁
以前お取引先の「GAIA」さんの連載で書いたらびっくりされましたが、
我家では牛のお産の後、1キロの味噌をぬるま湯にとかして10リットル分の味噌汁を母牛に
与えています。(味噌汁を産褥の母牛に与える酪農家はうちだけではないですが)

味噌汁を与える理由は

     ① お産の羊水で失われた水分やミネラルを補給
     ② 適度な塩分を与えることで疲労回復
     ③ 子牛が出てからっぽになったお腹では胃の位置が変わり、変胃という手術が
        必要な病気に罹りやすい。水分で胃を膨らませることで変胃の防止。

  などでしょうか。


実はこのところの大豆の価格の高騰で味噌の価格が上昇したことは、みなさん御承知の
通りです。
我家も去年までは、贅沢ですがある蔵元さん直送で酵母菌いっぱいの高級味噌を牛用
にも使っていました。でもあまりの大豆の高騰で大幅値上げになり、泣く泣く一般メーカー
のお味噌に変えています。
少しこの高騰が収まればまだ戻したいと考えています。

こうやって穀物投機などによる価格騰貴が不況のスパイラルを生み出している状況に
心が痛みます。


  
生産者になったから感じたこと
生産者(酪農家)になったからこそ感じたこと、というのはたくさんあります。
消費者の方々へ感じる気持ちもその中にあります。

一つはBSE(狂牛病)騒動。
2001年12月1日。愛子さまご誕生に沸く日、群馬では国内3頭目のBSE感染牛が出て
大騒ぎになりました。年が明けても風評被害は収まらず一時は近郊の野菜すら
値が下がりました。
肉牛農家の方には自ら命を絶った方もおられました。

消費者に理解を求めようと県の農協団体が、消費者に無料の焼肉サービスを寒い中
やってくれました。私は行けなかったのですが、新聞や担当者によると、お金を出して買うと
なると「危ないから」で買わない人たちが、タダで焼肉をサービスしたら子供を何回も
並ばせたり大人まで制止を聞かず、何回も並んで食べる人が多くて閉口した、と。
タダなら何回も並んででも食べ、お金を出すなら「安全に不安が」と口にする消費者が
多かったということとに、私だけでなく衝撃や怒りを覚えた生産者は多かったようです。


もうひとつはバター不足の記事でも触れた根拠もないのにやたらと「牛乳は体に悪い」を
言い立てて、ブログにあれこれと書く方。

酪農家は転業しろ、と他人の職業を貶める「論外レベル」もありますが、またそういうブログに
リンクしておられるお母さん達のブログを読むと怒るより、変に感心したりお子さんの将来を
心配したりしています。

大体の内容は、アレルギーでもないお子さんにお母さんの信条から牛乳を飲ませたくないと
いうことを巡ってのトラブルです。アレルギーではないから診断書は取れない。そこで
牛乳は毒だから保育園や学校で飲ませないでくれ、と学校に申し立てて教師とトラブルに
なって教師や校長の悪口をブログで流布する.......。というパターンが多いです。
コメントのやりとりで「同士」が「宗教的な理由」て方書いたら、というアドバイスをしていたり。
牛乳の成分のおやつはやらないでくれ、と保育園のお子さんに一人だけポン菓子を持たせた
と武勇伝を書いている方がいたり.......。と

何か酪農家としての気持ちの他に、そこまで自分の信条に子供を巻き込んで良いのか
親の一人として考えてしまいます。
嘘をつくことを平気で子供に教えているようなものだし、アレルギーでもないのに小さな
保育園児に一人だけ違うものを食べさせることを押し付けたり。

ブログに牛乳を巡って酪農家を卑しい者のように書き、意見を異にする関係者の悪口を
書く親よりアレルギーがなければ楽しくバランスよく食べ、友達と同じものを
囲んで食べる喜びを教え、食べ物があることに感謝する姿勢を自らが示せる親に
育つ方がよほど良い子になると私は思うのですが。
ご自分のご主人やご自分の仕事を他者がブログで嘲笑っていたらどういう思いをされるのか。

生産者になったからこそ感じた思い。喜びが大半ですが、乗り越えなければならないこういう
思いもあるのです。
また私自身、他人のブログの批判をこうやってしている自分に矛盾を感じています。





担い手育成にあたって
食糧の自給率のアップが緊急課題になってきました。
バイオエタノールや穀物への投機で、今までのように大豆やトウモロコシ、小麦などが
安定して輸入される保障がなくなってきたからです。
(酪農家の飼料代高騰もこれに起因しています)

農業新聞に「待ったなしの担い手育成」と題する記事が出ていました。
農業者の質を高めるための方策もいくつか挙げられていました。
私は「担い手育成」「農業の後継者確保」についてはせめて30年以上前から、現在における
ような取り組みを真剣にやっていれば、と思います。

私が小学校に通っていた頃、社会科の授業で都会の生活と田舎の生活を対比させる時は
必ず「三ちゃん農業」という言葉があり、田舎は賃金労働のために働き手の父は都会に出て、
残ったじいちゃん、ばあちゃん、母ちゃんで細々と農業を営んでいる、という農村のわびしい
イメージを植えつけ、かたや都会に出て会社に勤めてみんな都会に住むので人口が過密だ、
といういかにも都会の生活の方が田舎で農業を営むより豊かで幸せな人生だという書き方を
教科書に記述してありました。
これでは農業=食の仕事に若い人が誇りを持てるわけはありません。
「三ちゃん農業」なんていう言葉、今なら立派な差別用語だと思いますが。

担い手の質を高めるには認定農業者云々以前に、まず農業という仕事が食の根本を
担う重要な仕事であること。自給率を高めることがどれだけ重要かあたりから
しっかりと子供時代から教育することも必要だと思います。

地産地消についてもまず地元で採れたものに対し誇りと愛情を持つこと。
生産者はそれに応えられるような生産活動をすること、こういう価値観を根底に置いた
上での方策であって欲しいです。

農業=食を担う仕事を誇りを持てるだけの仕事に、意識も経済的にもしてゆくことが
急務だと感じています。 


プロフィール

けい

Author:けい
①群馬県でホルスタイン50頭、ジャージー牛5頭を飼養する家族経営の酪農家マダムです。

②1998年からベーベ工房というブランドでヨーグルトとモッツァレラチーズ及びリコッタチーズをハンドメイドで製造しています。安全でおいしい製品を誠実に作ることを信条としています。

③土作り、飼料作り~製品作りまで一貫して製造しています。

ベーベ工房も13周年を迎える事ができました。牛のこと、チーズのことなど日々のささやかな出来事を綴っていきたいと思っています。

ブログのスタンスですが、酪農とチーズのこと以外の、管理人の
趣味のことも書いてあります。なお記事の無断転載やコピーなどは
ご遠慮くださいますようお願い致します。

製品に関するお問い合わせは以下のアドレスにお願いします。

ベーベ工房のアドレス

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